おでん後申告とサバイバルといつもご機嫌な人

もうすぐお店を始めて12周年を迎えます。準備期間中の改装に多くの時間をかけたので、この場所に住み始めてから約15年が経ちました。長い歴史から見れば短いですが、京都の西陣エリアで町家や周りのお店の風景も少しずつ変わってきました。

先日、夏休みの子どもと海に行き、その帰りに昔ながらの定食屋さんに立ち寄りました。メインの汁物メニューは500円台、オプションメニューは自己申告制で、お店のおばちゃんが「あとで伝えてね」と信頼感たっぷりのシステムでやっていました。自営業をしていると、どんなお店に行っても原価や客数、家賃など現実的なことが頭をよぎりますが、それ以上に感じたのはシンプルな満腹感と心の充足感でした。

こんなお店が近くにあったらいいなぁと思いつつ、ふと近所にあった昔ながらの食堂を思い出しました。そこも地元の人たちに長く愛されてきたお店でしたが、さまざまな理由が重なり、次世代に繋がることはありませんでした。

京都を訪れる人々が口を揃えて言うように、個人商店には他にはない魅力があります。その魅力が何かというのは多種多様なのでさておき、個人的には、こういった形態がもっと増えることが、これからの時代を”人間的に”生き抜く術のひとつになるのではないかと感じています。

とはいえ、最近のビジネス界(特にマス市場)では、エグゼクティブや富裕層向けのサービスが最適解のひとつとされています。そんな中、心を込めたサービスや手間をかけた唯一無二の料理を提供するお店が、どうやって生き残っていくかに悩むこともあります。リーズナブルな価格で手間暇をかけるというのは、店側にとって労働とトレードオフになりがちです。これが飲食業全体の厳しい現実を助長していることも否めません。

そこで、これまでの考え方から少し距離を取り、別の視点で「できるだけ自分が生きているものを自分で賄う」という自給自足的な発想も生まれてきます。いわゆるサバイバル術を身につければ、時代や環境の変化に左右されない強さを持てるという考えです。しかし、富裕層向けのサービスを目指すか、資本主義に依存せず自然と共に暮らすライフスタイルを選ぶか、どちらにも魅力と課題があります。その中間に位置するハイブリッドな方法を見つけるのも一つの手かもしれません。

私たちはハーブティーの専門店として、また小さなお店として、何ができるかをいつも自問自答しています。「いいな」「楽しいな」と感じることを大切にしつつ、良質なものを提供し、そのストーリーを伝える。その上で、持続可能なビジネスモデルを見つけることが求められています(あぁ、なんだか盛りだくさんで、大変そうですが…)。

でも結局、いろんな筋道はあれど自分の身の丈(ライフスタイル)にあった適切なバランスを見つけ、どの道を選んだとしても、心を込めた唯一無二のものやサービスを大事にしつつ、社会の中で生きていくための欲望を叶える術を学び続けることが、納得のいく生き方にたどり着く唯一の方法なのだと感じています。

ともあれ、こんなあれこれを考えたりする前に、何があるわけでもなくご機嫌で幸せそうな、そんな人になりたいと心から願っている今日このごろです。