
年を重ねるにつれて、どんどん記憶があいまいになってくる。
それを「細胞が入れ替わるせい」と言ってしまえばそれまでだけれど、こうも思うのです。
“あいまいになっている”のではなく、ただその引き出しを開けられなくなっているだけなのでは、と。
人の記憶は、きっとたくさんの袋のようなものに詰め込まれていて、必要のないものを奥にしまい、また別の袋に大切な何かを入れている。けれどその順番や場所は、思うように整理できるものではありません。その量感はどうも三次元ではおさまらないようです。
だからこそ、ときには自分の心を家と同じように「片付け」をして、ふだん見ていない場所にもそっと目を向けてみたい。
香りが記憶を呼び起こすとき
この前、お客様が、「あ~これこれ、この香り(前に飲んでいただいたブレンドを数年ぶりに思い出していた)」「あのとき、○○で××だったんだよね~」というやりとりがありました。
そう、香りを通して、記憶が呼び戻されたのです。香りそのものではなく、その時の空気や感情ごと。
“嗅覚”は五感の中でも最も原始的な感覚器官といわれ、脳の深い部分に直接はたらきかけるそうです。
だからこそ、香りとともに感情や風景が記憶の袋にしまわれ、時を経て、ふっと湧き上がる。
香りは、忘れていた引き出しを探し出す小さな鍵のようなものかもしれません。

南の島で寝そべりながら、
潮の香りとともに、地平線を打ち消すような、
空に煌めく星たちと地上に飛び交う蛍の光たち。
北国の小さな島でみた、草原にたたずむ1頭の牛。
・・・その時の草のかおり。
そして、赤子の今しかないかおり・・・
自分が強く憶えていることは、どこか無意識的に香りが結びついています
ハーブティーをお客さまにご紹介するとき、言葉で香りを伝えることの難しさを感じます。五感はどれも主観的で、言葉にした瞬間にその一部しかすくい取れないからです。
だからこそ、たま茶では、味や香りそのものを感じる時間も大切にしています。ハーブティーを通して、ご自身の中の記憶や感情がふと立ち上がるような、そんな瞬間が訪れるかもしれません。

※この記事は個人的な経験と感覚によるもので何の科学的な根拠に基づいたお話ではございません。

