年を重ねるにつれて、どんどん記憶があいまいになってくる。
その理由を3ヶ月もすればほとんどが入れかわってしまう数多の細胞のせいにすることもできるのだけれど、こうも考えられるはず。
”あいまい”になっているのではなく、その引き出しを開けられなくなっているだけなんだと。
自分に必要じゃないものを記憶を袋のようなものにつめこんで、袋がたくさんになったら、あるものは外に出さなきゃいけないし、大事なものに限って入り口の方にあったり・・・。その取捨選択もたいていは思った通りにいかないし、その量感はどうも3次元的ではないみたい。
家の片付けと同じように、自分自身のふだん見ていないところも時には目を配りたいものです。
本題。
この前、お客様が、「あ~これこれ、この香り(前に飲んでいただいたブレンドを数年ぶりに思い出していた)」「あのとき、○○で××だったんだよね~」というやりとりがありました。
そう!ハーブティーの”香り”を通して記憶が呼び戻ったのです。直接、香りそのものが思い出されるんじゃなくて、その時の情景や出来事と一緒に引っ張りだされてくることも。自身の体感としてもしばしば起こるんです。
”嗅覚”というのは五感の中でも最も原始的な器官だそうで、脳に直接はたらきかけてくれる。だからこそ、自分の記憶(袋)につめる時に、感情や情景が一緒に取り込まれる。そして、時を隔ててもふっと湧いてくる。
香りは引き出しを探すときに大事なツールとしてはたらいてくれているのです。
南の島で寝そべりながら、潮の香りとともに、地平線を打ち消すような、空に煌めく星たちと地上に飛び交う蛍の光たち。
北国の小さな島でみた、草原にたたずむ1頭の牛。・・・その時の草のかおり。
そして、赤子の今しかないかおり・・・
自分が強く憶えていることは、どこか無意識的に香りが結びついている。そして、身のまわりには自分が思う以上に素敵な香りで溢れている。
ふだんハーブティーのブレンドのことをお客様にお伝えするとき、感覚を言葉として表現することの難しさを感じることがあります。というもの五感は主観的なものであって、その上澄みをすくって表現することはほんの一部を切り取ったにすぎないので。
だからこそ、言葉だけでなくて、ハーブティーにとってとても大切な要素である”香り”をそのまま、ご自身の感覚で感じて頂きたいです。もしかしたら大切な記憶や思いを発見できるかもしれません。
※この記事は個人的な経験と感覚によるもので何の科学的な根拠に基づいたお話ではございません。