家のお手入れきろく

ちょっと時間があいてしまったのですが、4月の中旬頃、生まれたばかりの息子が嫁とともにこの家に戻ってくるので、お店も定休日をあわせて5日間ほどお休みいただいて、ず~っとほったらかしにしていた居住部分の2Fの改装にとりかかりました。

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店舗部分の改装に約2年かけたおかげで、家にまつわることのほとんどは、精度はさておき、ていていのことができるようになりました。いまでもお店に来ていただいたお客様に、どうやって、技術を覚えたか?聞かれます。

ひとつは、店主は20代の頃に一年間、木工の職業訓練校に通っていたため、基礎的な木の加工技術を学んでいました。のこぎり、鉋とかノミなどの手工具の技術はあとでふりかえってみても、とても必要な技術でした。

それから、5年前に改装を始めた時に、お願いした大工さん(トイレとキッチンの下地をお願いしました)をはじめ、外仕事(改装の間のアルバイト:造園業)での現場でであった数多くの職人さんたち、協力してもらったプロの方に見聞きして覚えたこと。これもとても大きいです。やはり現場でしか学べないことはたくさんあります。残りはほぼ独学です。ひたすら建築関連の本と雑誌を読み漁りました。

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ご年配の方や、近所の方にお話をきいても、昔は自分の家は自分で手入れしていたようです。だからこそ、守られてきたのだと思います。大きいながれでみれば、一流のプロのみが家をなおすとしたら、日本の古い民家の大半がおそらく廃れていくでしょう(すでに多くの古い素敵な家が取り壊されるのを見てきました)。DIYやリノヴェーションというコトバが先行されがちですが、衣食住を見直すという意味で、できることから自分でやってみるというのはひとつの方法になっていくのだと思います。

写真はホームセンターで買った養生シート。”愛”のおまけ付き。
そう大切なのは住む人のお家への愛です。

さて、改装のお話。
まずは、

一年前に床を京都府の助成を受けて、杉に張替えました。理屈通り、つきあげ(湿気を吸って、はめこみの部分から板が浮いてしまう)を防ぐため隙間を0.5~1mm空けていたのですが、厚み40mmという極厚材だったためか、一年経ってかなりの隙間が見られるようになりました。3mmくらい。これだと赤子の指がはさまってしまう。これはあかんと(笑)

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幸い、接着剤は使わず、ビス止めだけだったので、すべて取り外して、もう一度貼り直しました。

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このように荷造りテープをカットしたものを挟みます。

そして、床の補修が終わると、次は今回の目的の壁と天井。天井は手間がかかるので、壁紙の上からペンキじまい。壁の色がねぇ~という注文が今回の改装のはじまりだったので、壁を中心に。

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まずは昭和の時代に貼られた、仕上げ材を剥がしました。これは店舗部分の時とおなじで、下地枠はとてもしっかり作ってありました(1Fはこれも全部はがして土壁補修をしました)。

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しかし、やっぱりといってはなんですが、至るところに穴が・・・。新聞とラス網(ねずみ侵入防止につかった金網)で応急処置をして、今回は、石膏ボードで下地をつくることにしました(冒頭の写真)。ちなみに、店舗部分の土壁を補修している様子が以前のBLOGにもあります⇒1 / 2

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写真はしっくいを塗る前に下地材を塗った所。京間6畳の部屋の壁を1日で塗りました。じつは、結構これたいへんです。

そして・・・肝心の仕上げですが、このあたりからは、1人での作業だったため、まったく写真はなし。どうしてないかというのは、以前の漆喰塗りと同じやり方なので1人二役なのです。こちらをご覧ください。⇒ 

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そして、仕上がった壁と、お手製のちり箒(左官の隅をお掃除する道具)。最初に壁を塗り始めたころに、作った百均の箒をアレンジして作ったものだけれど、自分で作ったからかこれがちょうどいい。お店にいけば普通に(ちゃんとしたものが)売っているのだけれど、こういう”手入れ感”というのがとても好きです。自分だけには使いやすい。

それにしても、漆喰(正確には砂漆喰)の塗は思い通りにいくようになるととっても楽しい。プロが求められる水平面とか均一さとかを求めなければ一番楽しい部分かも。壁は面積が大きいのでとっても空間の表情になります。さいきんは色々、情報も道具もふえています。もし機会があればぜひカベ!塗ってみてください!!

最後になりますが、いまもしばしば何故改装を自分たちでしたのか? という疑問をなげかけられるのですが、改装をはじめて5年、店をはじめてもうすぐ3年。
すべての人がすっと受け入れられる答えは見つからないのだけれど、結局は

やってみたい”ことだし、
生活に纏わることを自分の手で見直したい

という思いだけなんです。

生活にまつわることに興味があって、色々なものづくりを経験して、感じる中でひとつだけ分かったことは、手を動かして、感じてみないと分からないことがある

DIYやリノベーションというコトバが流行っているみたいだけれど、結果だけや経済合理性(結果的にかかるコスト)を考えれば、プロに任せるのが一番。

ラベルされた付加価値に踊るわけじゃなくて、なんというか本当の意味で生きているという所に繋がりたいっていう衝動のようなもの。形はどうあれ、自分にとっては”手で直す”というのがひとつのキーワードなんです。

自己満足かと言われれば、その通りで。
でも、自己満足がないものに面白いものがあるのでしょうか?

結果よりも作業していて、素材にさわって、考えて、試してみて。
その面白さは何にも代えがたいものがあります。

掘り下げていって、ある種の客観性のようなものも携えて、皆の持っている集合意識に触れられた時、そこにこそ大切な何かが生まれてくる。そういう場では不思議な事がおこる。それは特別なことじゃないはずです。

様々なことに感謝しつつ、自分の想いを大切に。
何かをやりたいという気持ちはとても美しいものです。